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ESG投資について調べてみた


最近よく目にするESGという単語。年金積立金運用独立行政法人GPIFも採用しているとかで話題になったので頭に残っていました。ESG投資の運用残高は2019年の時点で30兆円を超えており(ref.1)、世界的に関心が高まっています。諸事情あり、ESGについて知っておきたくなったので簡単に調べてみました。

簡単といいつつ結構長くなってしまいましたがご容赦ください。
まだまだ中身がとっ散らかっており、どちらかというと自分の備忘録的な記事です。
ESG投資とはなんぞや

ESGとはそれぞれEnvironmental Social Governance の略です(ref.2)。ESG投資とは、これらに配慮した企業に投資することをさします。

…はい、ピンときません。


指数会社のひとつFTSEが、FTSE Blossom Japan Indexで採用するESG企業を選別する上で使用している観点は次の通りです(ref.3)。

E-気候変動、汚染と資源、生物多様性、水使用、サプライチェーン

環境破壊や資源の枯渇に関わる企業はスクリーニングからはじかれ、逆にこれらの持続可能性に貢献している企業は評価が高くなります。

S―顧客に対する責任、健康と安全、人権と地域社会、労働基準、サプライチェーン

労働環境や社員の健康、地域社会などが評価されるようです。ブラック企業は評価がさがりそうですね。

G-腐敗防止、企業統治、リスクマネジメント、税の透明性

親族経営などは避けられそうですね。


長期的な観点からいくと、これらへ配慮した企業は長期に渡って安定的に成長を続けられるという考え方が欧米中心に広がっています。
反対に、ESGに配慮が足りない企業は、大きなリスクを抱えていると考えられています。

スクリーニング
ではどのようにスクリーニングを行うのか?
サステナビリティ・ESG投資 ニュースサイト(ref1)によれば、ESG投資のスクリーニング法は7つに分類されます。
1. ネガティブ・スクリーニング
(特定の業界を投資対象から除外する。たばこ、武器、原子力など。“今でもネガティブ・スクリーニングは、世界最大のESG投資手法です。”)

2. 国際規範スクリーニング
(環境破壊や人権侵害など国際的な規範を基に、最低限の基準を達していない企業の株や債券を投資対象から除外する手法)

3. ポジティブ・スクリーニング/ベスト・イン・クラス
(ESGに優れた株・債券等を選抜する方法。)

4. サステナビリティ・テーマ投資
(社会や環境に関する特定のテーマを設定し、それに関連する企業の株式や債券に限定した投資を行う手法。)

5. インパクト・コミュニティ投資
(社会的インパクトや環境インパクトを重視した投資手法です。財務は二の次のタイプと、財務もインパクトも両方追うタイプがあります。)

6. ESGインテグレーション
(既存の投資先判断の中に、財務情報だけでなく、非財務情報、すなわちESG情報を組み入れる手法。“ESG投資全体の中でも、ネガティブ・スクリーニングに次いで2番目に大きな運用額となっています。”)

7. エンゲージメント/議決権行使
(株主としての投資先との関わり方に関するもの。企業に対して特定のアクションやポリシーをとるよう働きかける事。“エンゲージメントや議決権行使は、株主の権利ではなく、「株主の責任」として位置づけられています。”)


運用例
では具体的にはどのように運用されているのでしょうか。
我らがGPIFを例に見てみましょう(ref.4)。

GPIFが現在採用しているESGの指数は次の通り
ESG総合型
―FTSE Blossom Japan Index 国内株
―MSCIジャパンESG セレクト・リーダーズ 指数 国内株

Social
―MSCI日本株 女性活躍指数 (愛称「WIN」) 国内株

Environmental
―S&P/JPX カーボンエフィシェント 指数 国内株
―S&P グローバル大中型株 カーボンエフィシェント 指数(除く日本) 外国株

Governance
―(採用なし)

総合型は、E・S・Gを総合的に絶対評価or相対評価を行い、スクリーニングを行っています。
環境については、炭素排出量をベースに評価しています。
社会については女性活躍指数を用いています。

ESGに対する直感的な感想
日本ではまだまだ浸透していないESG投資ですが、世界全体では30兆ドルという規模で運用されており、これからも大きな柱となり得るのではないかと感じました。経済的な合理性や企業の利益ばかり重要視された従来の投資法と異なり、より広い視野で、地球環境の持続性や社員の福祉、正しい企業のあり方を追求するこれらの投資に可能性を感じました。

ESG投資の課題と懸念
一方で、課題や懸念も見られます。個人的に気になった点をまとめます。
・収益が必ずしもインデックス投資に勝るわけではない
環境負荷に対して配慮するということは、それだけ利益を犠牲にしたり、コストをかけることになります。その分、配慮しない企業よりも収益性が下がる可能性があるでしょう。投資したお金がどのような使われ方をするのか、そういう先々まで見据えたゆとりある投資家の選択肢となりそうです。

・ESG投資のテーマ株化
これだけ資金が集まってきている投資法ですので、そこに群がってくる投資家も少なくないように思います。販売会社の売り文句としても、「お金の使われ方をより良いものに。長期目線でみればESGスコアが低いリスク企業を避ける事が出来る」などの甘い言葉が容易に想像できます。あくまでも長期で見て、収益性だけでなく、社会全体、環境全体も込みで持続可能性の期待できる投資法ですので、投機的な売買はあまり好ましくありません。それにもかかわらず、これからESG投資が注目されそうな予感はします。

・ESG適格企業を目指した表面的な優良企業の増加
資金が集まりやすいということは、企業としても株価上昇のためにESG評価が気になるところでしょう。それ自体はとても歓迎します。ESGの視点を元に、労働環境や福祉など、働き手にとってより良い職場になるのはいいことですし、環境に配慮した活動も大歓迎です。投資家としてみた場合、企業がより正しく運営されるのは良いことで、粉飾決済や不祥事に巻き込まれたくないという思いもあります。
しかし、ESGの評価を上げる事にばかり気がとられてしまい、中身が伴わないケースも生じうるのではないでしょうか。例えば、有休消化率を高めるために取得を促進しながら、その分の仕事をこなすために残業や休日出勤が増えるなどは本末転倒です。GPIFでは女性活躍指数を採用していますが、女性社員が増える事が女性の活躍と必ずしも一致しないケースとかも考えられます。男女問わず、育児休暇などの福祉が利用でき、男女問わず実力に応じた昇進なり昇給なりできるのか?企業の中身が大事だと思います。ちなみに、MSCI女性活躍指数の採用銘柄の例は次の通り(ref.5)。
トヨタ自動車
花王
キーエンス
リクルートホールディングス
KDDI
東京海上ホールディングス
資生堂
アステラス製薬
HOYA
NTTドコモ
ダイキン工業
この辺の会社の人に会ったら、女性の立場や会社全体の福祉労働環境について聞いてみたいものです。

・スクリーニング法の課題
日本は女性の社会進出がまだまだ遅れていると言われています。女性活躍指数だけでなく、会社の経営や株主還元などの企業統治についても日本は後れを取っているという印象です。その中で、日本企業だけで比較して相対的に評価が高い会社を選んでも、果たして世界の標準に達しているのかどうか疑問です。
相対評価だけでなく、絶対評価も入れた方が良く、世界全体で比較して優良な企業であると評価されるようにならないと、日本企業全体の体質改善には至らないのではないかと感じます。

・人のさじ加減
ギャンブルやタバコも、たしなむ程度ならいいと思うのですが、こういうのを一切だめとする向きは今一つ受け入れがたいです。自動車は事故率が高いですし、砂糖も依存性や病気を引き起こします。しかしこういった業界は的にされていません。結局人の感情でESG適格か否か別れるケースもあり、クリアカットに線引きできるものでは有りません。叩きやすい業界を叩く材料に用いられないか懸念しています。

・世界全体でESG投資が広まっていることから、国際間の課題とかも考察すべきですが、長くなってきたので割愛します。


まとめ

以上、国内のESG投資を中心に纏めてみました。

ESG投資は、環境・社会・企業それぞれがより良い状態で機能している会社をスクリーニングし、企業―環境、企業―社会、企業―企業のつながりがwin-winの状態で長期的に発展し続けることを期待した投資法なのだと受け止めました。

課題もまだまだありますが、今後ESG投資はさらに広まっていくと感じています。

投資したお金が誰かの破滅をもたらすような事業に使われるのはやはりよろしくない。
適切なESGスクリーニングを行っているような事業などがあれば、投資対象として優先的に考えることも視野に入れつつ、ESG投資の今後の展開に期待していきいたいと思います。


参照一覧
1.増えるESG投資の運用残高 3300兆円、質向上課題に Earth新潮流 日本総合研究所理事 足達英一郎氏 日本経済新聞

2.サステナビリティ・ESG投資ニュースサイト

3. 投信資料館

4.グローバル環境株式指数を選定しました 年金積立金運用独立行政法人

5. MSCI女性株価指数

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